高畑耕治の詩


恋うた、潮騒



  麦わら少女


潮風ゆりかもめ
水平線に
麦わら帽子ひとつ

黒髪
ちいさな背
少女ひとり

磯のかおり
潮のしぶき
散って


ひかり



  潮騒と


波のしぶき
潮風にとけ
鼻くすぐり
潮騒にはね
鼓膜くすぐり

この胸にあなたふくらんで
いっぱいになる

しょっぱい
海になる

きらめきに
呼ばれ溺れ

泣いていよう
潮騒と

いつまでも



  潮風に


潮風にあの日
美しくなびいた
あなたの黒髪
しぶきに弾けた
なつかしい微笑み
夕波にきらめいた
愛しい声

海と空のあわいの
あのかすむあおの
あわいはかなさが
好き

潮騒に
ふりかえり
無言の
くちもと
瞳で
伝えてくれたあなたが
好き



  水平線に


砂浜遠くまで
寄せ返す泡だち
みぎわ眩しい曲線
青空
白雲うっすら
縞模様

海も空も
透明水鏡
澄みわたり
海に空を空に海を
映し溶かし
抱いて
結ばれようと

どうか
交わることできますように

かえろう
あの水平線に



  恋うた


うすももオレンジ
やがて金に
夕空しめやかな絹のよう
夕波なぎさも極め細やかな
きらめき
みぎわ歩き
素足あらわれてる
あなたを
見た
気がした

ひとり
潮騒になる




* ルビ 潮騒: しおさい。愛しい: かなしい。
    白雲: しらくも。水鏡: みずかがみ。



「 恋うた、潮騒 」( 了 )

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