高畑耕治の詩


愛しみのうた



  涙、ひかり色


美しく想えるのはもう
愛しみばかり

愛してるのに
想い届かなくて叶わなくて
苦しいさみしい悲しすぎる夜には
胸痛めて泣くしかない
星たちお月さま静けさに佇む木々に
みまもられ
草花や小鳥たちの寝息の
そばにいること
思い出せるまで
思い出せないまま寝落ちできるまで
泣いていよう

木々も草花も
星たちもお月さまも
野山の風も
海辺の潮騒も
泣きながら
こだましてくれるから
愛しい声で
あなたのあの声で

繰り返し響く
さようなら
こだましつづけるでしょう
死ぬまでこころに
死ぬまであなたと

ひかり散りわたし深く
刺さったあなたの
別れの

いつしか
こみあげる泉
流れやまない悲しみの
源になってしまいました

こんなに苦しくさみしく悲しく
やりきれない夜の
しじまに
誰にも知られずあふれ
こころ痛めるばかりの
涙なんて
意味もなく
むだ

なのに
星たちもお月さまも木々も
草花も小鳥も
意味なんて知らず
泣いてる
みんなしくしく美しく
泣いてる

涙の
ひかり色に
世界染まり
静もり

それでも
ひとだからほんとうは
こころとこころ
肌と肌
愛するあなたといま
かさねあいたい
ねがいに
眠りこむ



  優しい悲歌


こころ痛くこぼれ落ちた言葉たち
憎しみにさいなまれ
寒さに凍え焼かれながら
空あおぎ悲しく
雪恋う夕暮れ

お月さまに
すさむこころ詫びました
ひかりの滴に瞳ぬらし

降りしきる静けさ
柔らかな優しい音楽
傲慢にかき乱す不協和音
星の汚点爆音戦闘機
( やがて空と地から
 消え去りますように )

生活にこころ汚れても
訪れ染めなおしてくれる
お月さまのひかり
( 三日月あなたに溶かされました )
訪れときめき思い出させてくれる
星の瞬き
( 星だけはいつも友だちでした )

気づくとこころ目覚め
痛くせつなく
星月夜みあげ声なく
あなた呼んでいます

 お月さまのひかり遡る
 さかなになりたい
 星の海さまよいうたう
 人魚になりたい

海はいつもとおく
なつかしい憧れ
愛するあなたでした

 あなたとどこまでも
 夜空およいでゆきたい
 宇宙の波間ふかく
 しずんでゆきたい

わたしを生かしてくれた
あなたの声
あなたの微笑み
生きつづけること
励ましてくれた
あなたの肌
柔らかなぬくもり

 あなた探して泣きましょう
 想い抱き締めゆきましょう

耳を澄ましても聞こえない
歓喜の歌

 生きてどこへゆきましょう
 死んでどこへゆくのでしょう

優しく痛ましく人間らしい
悲歌ばかり世界に
美しく
ふるえていました




* ルビ 愛しみ: かなしみ。愛しい: かなしい。



「 愛しみのうた 」( 了 )

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