高畑耕治の詩


浮舟




こころの宇治川の岸辺に
耳を澄ませば
絶えまない泡だち
櫂こぐねがいの音
聞こえるのです

みずになりたい
くうきになりたい
にんげんやめたい
なにものでも
なくなりたい

美しいものって

なんだろ?
   ? 愚問符の
  ? 浮舟であるままの

 ? 風船のぼりゆき

? 溶けゆきたい

? お空に

? かなえられぬまま

 ? おちゆく

  ? かなしみの
   ? 夢浮橋
    ? いつか

虹に



  こだま


わたし千年の時の隔たりも
うつつまぼろしの境もなく
愛し契り生きました浮舟と
儚くうすれゆく美しい
七色に溶け




*ルビ ねがいの音: ねがいのね。七色: なないろ。
*参照
紫式部『 源氏物語 』
宇治川: 「宇治十帖」の舞台を流れる川。
浮舟 : うきふね。「宇治十帖」の私の愛するかなしい姫君。巻名にも。
夢浮橋: ゆめのうきはし。『源氏物語』「宇治十帖」の最終巻名。



「 浮舟 」( 了 )

TOPページへ

銀河、ふりしきる
目次へ

サイトマップへ

© 2010 Kouji Takabatake All rights reserved.
inserted by FC2 system