高畑耕治の詩


東北、恋。
  海と牛と少女に


  三陸、銀河鉄道。
    1983年〜2013年、未来へ。


「 弱いものいじめばかりの 」 こんな世界
いらない 二十歳のぼく
死にたい死のうと惑い悩み
ひとり 旅した
東北
ふたり旅あこがれ 恋人
みつけられず
生み育てられた大阪逃れ
死にそこなった東京の孤独から
ひとりきり 逃避行

田んぼとみどり
はだかの陽ざし かおる風
険しい断崖
目の前に突然ひらけた
海 大きなおおきな
あお
 ( こんなに美しい世界が )

透きとおる 濁りない
潮水
足をぬらし手のひらにすくい
しょっぱい涙
洗われたんだ
汚れるばかりの悲しみを
 ( こんなに醜い世界
  おぞましいぼくがいても
  こんなに美しい海が )

溺れ死にかけてた息
吹き返してくれた
潮風
沖のくじら雲
「 ひ 」の姿のかもめ
誘ってくれた
青空へ
遠くへ
 ( 生き延びるのは醜くても
  恥ずかしいことじゃない
  自虐し自滅するより たぶん )

三陸海岸
意思の産声
 ( 死なない

  生きる )
初めて響かせた蘇生の地
忘れられないふるさと

三陸鉄道 ぼくの
銀河鉄道
走り続ける
星の調べの岸辺
天の川銀河のなか
なつかしい海岸地方を

 ( 津波の 深すぎる
  傷
  痛み 悲しみ
  嘆き 絶望

  なみだながれます
  どうか癒えますように
  癒えることなくても

  生きていてください
  生きてください )

銀河鉄道
走り続ける
昼も夜も降りしきる星の
潮騒あび
愛しいふるさとを

 ( こわくてたまらない

  なのにいまも
  海が好き )

走り続ける
愛しみの渚を
いまを
未来へ




●参照
* 銀河鉄道。宮澤賢治『 銀河鉄道の夜 』から。
* 汚れるばかりの悲しみを。中原中也「 汚れつちまつた悲しみに…… 」。


●ルビ
 二十歳( はたち )。汚( よご )れる。誘( さそ )って。愛( かな )しい。愛( かな )しみの。



「 東北、恋。海と牛と少女に ・ 三陸、銀河鉄道。1983年〜2013年、未来へ。 」( 了 )

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