高畑耕治の詩


空の絵本

あなたの舞いのぼる煙なみだにかすみ見失ったあの日から
探し続けているよ
空を
 ( どこにいるの? )

今日は
曇天
たれこめる
雲 不意に
あられ 激しく降り弾け
染まる地平真っ白
撃たれて
 ( 痛いだろうに…… )
撃たれても真っすぐ
首のばし翔る
白鳥
 ( なぜ飛び続けるの? )

ひとり 離れ
ふたり 添い
皆で
 ( 聞かせて )
哀しく鳴き交わす

 ( 読み聞かせて )
綴られてゆくひらがなの
風に織りなす羽ばたき色の
絵本

書棚のすき間
手にふれた封筒
 ( ここで…… )
手紙の白い羽根ひろげたら
 ( やすんでいたの? )
手書きの
にじんだインクの文字のゆがみから
洩れでた

あなたの
泣き顔

 ( いてください )
舞いあがり舞いおり
空に
呼ばずにいられないわたしの
そばに
 ( きてください )
ここに わたしの
こころに
 ( いてください )
いつも
いつまでも

 ( 泣いてもいいよ )



   * 2連11行目ルビ:はくちょう

   * この作品は詩人・ア本恵のブログ「 遠い空へ 」の
     詩「 いてくれるだけでいい 」との木魂です。

「 空の絵本 」( 了 )

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