高畑耕治の詩


訪れ、涙の音楽の

中学校の教室
文化学習発表会
ブンカガクシュウハッピョウカイのテーマは
「 地球・未来へ 」
劇なにやろうか アイディア出そうの
学級会 ガッキュウカイ

手はあげないけど
夢想したの
この星 草と木だけになったら平和だろうなって
人間いらない そのほうが星の子どもたちきっと
しあわせ
動物と小鳥と虫たち
いないとお花や木々 さびしいかな?
実を結べないお花たち
死んじゃうかな?
草木がなければもうこの星
地球じゃないかな?
月のように ぽっかり
照らされ宇宙に浮かぶ 石の星
夢想してたら

思い出したの
小学校の教室
卒業お別れ会の劇のテーマは
「 未来の学校 」
手をあげ話したくなったの

「 世界のみんながわかる言葉で
世界のみんなの新しい言葉で
未来の私たち
話しあえたらいいなって思います 」

先生 いい意見ねって
とりあげてくれた

手にした台本 でもいつのまにか
変わってた
英語と中国語と何とか語と何とか語
いまある外国語ばかり音読してる場面に
あれっ これって
私の未来じゃないよ
授業科目がふえただけじゃない
ひとつの言葉は 良くないの?
新しい世界語は 無理なの?
大きい国の言葉 押しつけるの?
先生勝手に決めちゃった

音がなくても 文字がなくても
握手や 指と肌のふれあいでも
キスでも テレパシーでも
よかったんだ 私
手話のように にらめっこのように
わかりあえれば
心通えば
先生
心つながりたいって

見ちゃだめなの?

中学校の舞台でなら私たち
創れるかな この夢
演じられるかな?
新しい世界語 見つけられるかな?
やっぱり授業科目ふえるだけかな?

おなか空いてきたな
日がかげりだした校庭には
夏にお別れ せみしぐれ
秋の訪れ 虫しぐれ

みんみんぜみ あぶらぜみ かなかな
にいにいぜみ くまぜみ つくつくぼうし
似てるけどみんなちがう声
混声合唱団ね
おんなじ鳴き声なら
こんなに沁みないな きっと
心に

こおろぎ すず虫
きりぎりす まつ虫
なんて きれいな
弦楽四重奏

聞き分けられはしないけど
ふりしきりやまない この音楽
ハーモニーって
いいね 私
大好き
愛してるって
心つながりたいって
歌ってるんだ
せみさんも
秋の虫さんも きっと

あっ
デジャ ・ ビュ
このハーモニー 私いつか
聞いてた
そう
中学校 教室
学級会
あ れ は き っ と
未来

文化学習発表会のテーマは
「 地球を・もう一度 」だったから


クラスのみんなに
せみさんの
秋の虫さんの
心で
話していたんだ
泣きながら

 「 この涸れた石の星にあったという
 あおい海と
 あおい空

 草花と木々
 虫と小鳥と動物たち
 いのちが
 息していたという
 あの過ぎ去った時代を
 劇にしようよ

 原発事故と戦争で
 絶滅させてしまった生き物たち
 思い出そうよ

 過ちくり返す人間だけど
 壊れそうな星だけど
 きれいだなって
 好きだなって
 感じること
 まだできたという時代の
 心の種
 この砂漠と瓦礫の世界の
 どこか地中深くいまも
 息してるかもしれない

 探しにゆこうよ
 願いのかけら もう一度だけ
 思い出そうよ

 心つながりたいって
 愛しあいたいって
 夢を
 とり戻そうよ 」

あ 美しい音楽
ハーモニーが 校庭から
舞いのぼるよう
夕焼け空へ

訪れてくれた
涙のせせらぎ 時を越え
この星のみんなを たえず新しく
あらってる


「 訪れ、涙の音楽の 」( 了 )

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