高畑耕治の詩


かもの赤ちゃん

かもの赤ちゃん
かわいいです
小さくってまるくって
なんて泳ぐの速いんだろ

からだの小舟から流線形の波もよう
ひろがり澄んでゆく音楽のよう
夢色のまどろみかもしだし

ひらはらひらはら
大きな水玉のまわり
舞うばかりの私 気づくと
ちょうちょでありました

るり色のびいどろ
滴のビー玉 見つめたら
傷ついた星でした

荒らされた地平線
戦争に追われ 国境逃げまどうひとびとの
原発に汚された水平線
ふるさと奪われた子どもたちの
痛み
こころに沁み
こころ染めるばかりの私 いつしか
せみでありました

  海も地もいつからか
  汚されるためのものになったのでしょうか?

夏の陽射しにひたすら
干からびるまで鳴きつくそうと

  子どもたちに親が手渡すものはいつからか
  災いになったのでしょうか?

じいじいみんみんかなかなかなかな
ただ けんめいに
しぐれております と

水玉もようの星の傷ぐちから
あおい涙あふれています
葵の花 咲きこぼれ
水の花びら波もよう

風と光のせみしぐれ
愛しみ透き入り
静けさ 降りしきり

なつかしい海
愛おしい地
いえるまで
お花畑
揺れひろがってゆきます

波のしらべに耳澄まし
浮かんでは沈んで 私もいつしか
おんぷの小舟
ぴちゃぱちゃ
歌っておりました

かわいいかもの赤ちゃんたちと
波のお花にくちづけながら
ちゃぴちゃぷ
泳いでゆきました

地平線と水平線の
まるみに優しさ
とりもどすまで




* ルビ 愛しみ:かなしみ



「 かもの赤ちゃん 」( 了 )

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