高畑耕治の詩


ほたるの歌



  啄木ぼたる


部屋の窓から舞いこんできたの
ほたる
こんな都会に これは
夢?
ほたる 話しかけてくれたの
ひとりぼっちの私に
淡い光で

   *

ぼくは啄木 啄木はキツツキ
夢じゃないよ
啄木の魂 啄木ぼたるです
きみの心の歌が ぼくを呼んでくれたんだ
ぼくの心の歌を きみは読んでくれたから

  はたらけど
  はたらけど猶(なほ)わが生活(くらし)楽にならざり
  ぢっと手を見る

死んでぼく ほたるになってた
キツツキにしかなれないって思いこんでたぼく
戸惑い悩みました
なんでほたるに?
勝手に光るんだよ おしりが
光る 光ってる
なんで光るんだろ?
おなかのおぼろな温もりが
不意にささやいたんだ
ぼくがいちばん好きだった
歌を

  こころよく
  我にはたらく仕事あれ
  それを仕遂げて死なむと思ふ

ほたるの天職は
おしりの光で求めあう

なぜって?
ぼくなんです 光が
なぜか光なんです もうぼくは
求めずにはいられない たとえ
出会えなくても結ばれなくても
おそれず ただ灯すばかり
心の言葉
それだけを ぼくは

      き
     み
    が
  好
   き


 し
  て
   い
  る
 よ

心の
 光でぼくを
  呼んでくれた


    き
   み
  は

 し
  い

  ほ
   た
 る

もうひとじゃない ぼくの
悩んでばかりの ほたるの
歌を
愛するきみに



  


  泣け泣け 涙ぶくろ
  傷つけ破れろ 涙ぶくろ
  痛くてもつらくても耐えて湛(たた)えて
  負けろ破れろ
  頬ぬらせ

  咲け咲け 涙ぼたる
  涙の光ぽとり 涙ぼたる
  涙あふれあふれた涙のゆらめきに
  咲けほたる
  花散らせ

  涙ぶくろ 滴の光 風に
  涙ぼたる 光の滴 愛(かな)しく
  舞いあがれ
  空へ

   *

ありがとう 啄木ぼたる
ほたるなのね 私も
求めずにはいられない そう
もういちど
光る 私
飛ぶ



  *短歌二首の引用は『 一握の砂 』石川啄木より。


「 ほたるの歌 ・ 啄木ぼたる 」( 了 )

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