高畑耕治の詩


さようならこんにちは

アウストラロピテクスのいのちを受け継ぎ ひとが
他をおしのけ増殖しはじめてから
棟梁が人殺しを自賛する民族と国家の
わがままだらけ戦争だらけ殺りくだらけ
この星のうえ 殺しあいが
途絶えた時間は ほんのわずか
この星のうえ
憎しみにのまれ祈りが
誰もが疑いに疲れ性交さえ
途切れた瞬間も たぶんあった 悲しみの
この星のうえ けれど必ず
どこかでいつも
誰かが誰かを どうしてなんだろ?
思い 愛してた
誰かが誰かを いまも
思い 愛してる わたしも
この海の星の波だから 夜空からの
微かなひかりのあなたに ふるえ 歌ってる

この星のこの島で
生きたくて生きられなかった ひと
他のひと助けいのち失くした ひと
追い込まれ自らを殺した ひと
一年になんにん 一日になんにん
おおきすぎる数字のすきまの ひとりきりの
あのひとだけの ふりむいてくれる素顔に
どうして? 逝ってしまうの?
こころ差しのべつづけたい
どうして?

この星のどこかの町にも
おなじ日のおなじ瞬間は ふつうにあって
たったひとりのお母さんから
ひとりのいのちになる瞬間 激しく泣いてこんにちは
嬉しいの? 悲しいの? あれ ほら もう
笑ったよ

さようならこんにちは
ひとりひとり死んでゆく それでもいのちは
宇宙の海にはだかで ふるふるふるえ 歌いはじめる


「 さようならこんにちは 」( 了 )

TOPページへ

詩集『こころうた こころ絵ほん』から
目次へ

サイトマップへ

© 2010 Kouji Takabatake All rights reserved.
inserted by FC2 system