高畑耕治の詩


生まれた日から

こんがらがってしまった赤い糸は
つながっているよ
切れないからだいじょうぶ
手繰りよせ ぼくはあなたにきっと
たどりつくから いのちをかけ
抱きよせるから だいじょうぶだよ

せつなく いとおしく くるおしく
憧れて
絡まりこわばった諦めの糸を
溶かしてゆく
ゆっくり かなしみに揺れ
あなたへ

透きとおる水のひかり
潮騒
こみあげ満ちる波のまにまに
こんがらがってしまった赤い糸の向こうのあなたをもういちど
抱きよせようと
手探りする
初めて結ばれた日の記憶を

思い出すんだ
海にいのちが生まれた日

あなたがいた海にぼくも
いたんだ くるんと丸くなって できたての
くちびるに触って
指の肌はまだ
透けていた けど糸は
ほら うすく赤く
あなたの
おかあさんの ぼくの
おかあさんの
羊水は 海だから 

かなしみに揺れ
かなしみに濡れ
かなしみの涙に洗われて

初めて結ばれたのはきっと
とおい日 闇に星のひかりが
生まれた日 この海の星にいのちが
生まれた日 遥かになつかしいあの日からあなたをぼくは
愛しているんだ


「 生まれた日から 」( 了 )

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