高畑耕治の詩


おへその お


あなた わたしのどこが好き?
きれいな おへそ
へんなひと ほめてるつもり?
でべそだったから コンプレックスがあるんだ
一〇円玉をはりつけてへこませたんだよ こどものころ
シャツをめくってにらめっこしながら
ゴマをとるのが好きだった( なかなかとれなくて )
痛くなるまでいじくって( とれたらうれしくて )
おふくろにおこられた
あなたのおへそ なんだかあなたの
おかしい顔にみえてきたわ

へそには表情がある
生まれたばかりのあかんぼの
羊水の思い出 汗と涙と
いのちのしわがきざみこまれて 死ぬまで消えない

どこから生まれたのってきいたらおふくろは
おへそのしたからっておしえてくれた
ふしぎだったよ
おへそがわれてでてきたのかな?
おなかがうらがえって生まれるのかな?
ふたりの おへそとおへそ つながっていたって
なぜか信じてたんだ

わたしね いまももってるの
おかあさんにもらったの 白い和紙の包み
そっとひらくと白い粉をまぶされたしわしわの
おへそのお
ふしぎだったわ
わたしのおへその お?
おかあさんのおへその お?
いのちをむすんでたふたりだけの お
たいせつな形見なの

ぼくはだまってくちづける きみの
きれいなおへそに きみをそだてた
おかあさん なくなった
おかあさんのおもかげに

きれいなおへその顔した
女の子を生もうね(ぼくのでべそににないでおくれ)
へんなひと わたしあなたの
やんちゃを生むから
安心してね


「 おへその お 」( 了 )

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