なだらかな山の斜面の
細やかな無数の枝々の結び描く
極小多角形の鋭角もいつのまにか
春がすみに
きみどり まぶされ
みどり 灯され
ちらちらまるみの
点描画
やわらかな
息吹き かろやかな
若葉芽吹き
浅みどり
深みどりに染まる山肌に
桜色ほんのりまだらもよう
浮きあがる姿に
誘われ焦がれ歩く山すその
登り道わきに
山神祀る祠石
渓流添いの道
赤い花 山ツバキ いま花落ちぽとり
淡い花 岩ツツジ いま花ひらく
夏には水源の池のほとりに
サギソウ
青空舞う羽の
白い花にあいたいと恋う
山の高い木立ちの間
白龍 黒龍の祀られる
社はきつい石段のうえ
ひっそり立つお百度石
足もとの落ち葉は茶の紅葉
みあげると
ひかり透かせさやぐの若葉
きみどりの木漏れ日に
出征軍人おもい無事帰還祈り
お百度参り願掛けの
悲しい後ろ姿がちらつき
かすみ消えた
頂ちかく急斜面に中世の
山城趾
石垣ばかり残され
合戦討ち死に転げ落ち流された血と
おおくの屍の嘆きは埋もれ土に
還ったはず
山頂にひび割れたコンクリート建造物
「ゴミは持ち帰りましょう」
掲示板のかかる壁面
彫り刻まれたままの文字
「警察署管下警防団 結団記念
昭和十四年七月七日
国威宣揚」
日章旗たなびかせ終え いま赤錆びた
この国旗掲揚台も
あの日みた ふもとの平野市街地への
アメリカ軍の
無差別爆撃殺戮 狂気と悪
空襲、炎、逃げまどう人
焼かれた人 罪のない
子どもたちの
悲鳴と
恐怖と
絶望
死骸
焼け跡
そのとき声がしたのです
「そうその日
わたしもみました」と
春空からわたしに静かに
話しかけてくださったのは
山桜 満開の
こずえ越し
桜半月
白い月
慈しみのまなざしに
見守られ
春風に旅立ち
桜ひとひらひとひら
こずえから地までのその
ひととき
午後の陽ざしの
永遠を
舞うよう
花は
蝶
舞いおりてゆき
羽をとめたのです
まだほっそりとした
苗木
枝さきに
くちづける天使のように
根もとには手書きの
願い書き
ふもとの
ふるさとのまちの
中学生たち 卒業の日の
旅立ちの言葉
「きれいな花を咲かせますように」 と
お月さま
山神さま
白龍さま 黒龍さま
もう
戦国武将も日章旗もいりません
大日本帝国も旭日旗もいりません
合戦も内戦も戦争もいりません
嘘で塗り固めた醜悪な人殺しなんていりません
ホロコースト 大量無差別殺戮
十字軍 狂信 侵略 略奪 暴行
くりかえす血まみれの貪欲極悪の
アメリカもイスラエルも
ロシアも中国も
大国も小国も独善狂信暴力国家は
驕り高ぶる政治家は扇動家はいりません
お月さま
山神さま
白龍さま 黒龍さま
苗木の桜を
桜の苗木を
みどりと
花を
どうかおまもりください
まだか細く弱いこの苗木が
雨ニモ負ケズ風ニモ負ケズ
わたしの背丈をおいこし越えて
大空へぐんぐんと伸び
太く深く山の頂の土に
根づきますように
こずえ越しに
お月さまを見あげる
恋人たち
こどもたちを見まもる
きれいな花を咲かせますように
植樹の
ねがい
花にやどり
その日には
悲しみを越え憎しみを越え
きれいな愛を咲かせますように