高畑耕治の詩


子守歌




あわてふためきなぜ、まぶた閉じ急ぐのか
果てなく終わりなく
うっとり、あきれるほどの
眠り
すぐそこまぢかに
待ってくれているのに

ねむれねむれあなたはよいこ
ねんねんころりよおころりよ

与えられた瞬時、懸命謙虚に
競い殺しあいながら
ときには他人、他の生きものにも
ゆずり、ほんの
ときには愛し
できうるかぎり、優しく
できうる生きものなら、良かったのに
猿人

ほころびと滅びの
無情の銀河のよどみ、天の川銀河に波うち
せせらぎ、泡立ち
愛せるなんて
幻のようにすてきなこと
だったろうに

おやすみなさい
さようなら夢を壊し砕きつづけるこの
世界の悪意の悪魔のなにもかも
眠りのゆきさきの小道に
夢の花を選べず
夢をみない夢を選べず
目覚めない眠りを選べなくても、ただ
いまを断ちきりいっとき
やすらうため

眠れる眠れます薬の羊
一匹2錠三匹よん錠、星の数
悪夢の終わり夢のゆめ

つかのまの
やわらかなえみ
つかれたひとみ
まぶたにつつみ
えいえんに
さよならしたら
しずかにおなき

春から夏へ吹きぬける季節
散りぢりに
素知らぬ顔で
透明な風に舞い
溶け

どこからともなくいまも
薫りよみがえる
花、花、もうみえない
桜、花びらのように

悲しみの
星、星、愛しみの銀河の
桜、花びら
散りぢり
終楽章には星風の
音も色もかたちも
闇もやみ

悪事の氾濫の泥流
向う岸とおく
山なみの稜線の白雪
うっすら溶けゆく
空の

かすむ果て

水平線の夕映えの
さいごの輝きの記憶のように
なつかしく
遥かな
あい

目覚めるたびめぐる悪夢も
四季、らせん迷路の
愛しい色彩
菜の花の

野の花の

赤く、白く
青い
星の花輪
たかく編み
星座心象
とおく紡ぎ
こおりつく胸のおくふかく
あたたかく宿して

りんねおへんろ、ねんころり
ねむれねむれあなたもこよい
ねんねのこねこ
ねむれる森の
えいえんに
えんえん、すやすや
おめざめなさい

なきはらしている
星のひかりに
散りまじり

風に星の香
花の音
さやかに

そっと
おやすみ




※読み 愛し: かなし



「 子守歌 」( 了 )

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