高畑耕治の詩


カモのお話





古池やなにやら飛び込む水の音
真冬にはカエル冬眠してるかも

ぶわっ ぼわっ ぶわっ ばっ

なんでこんなに悪声なのか
罵声なのか
身を守る威かくなのか
求愛の
美声なのか

カモのことはカモのみぞ知る
カモのことはカミにではなく
カモに聞け

水面にも
水色の空、茜雲ゆらめき
水紋にカモ
潜り、消えて、遠くに
ぽっかり浮きあがる
あの子ガモ

カモカモきみは
沖合いとおく
水平線を
静かによこぎる舟のよう

ふいに訪れてくれる
四つ葉の流れ星のよう
幸せの水鳥、空の鳥のよう
木から落ちた飛べない猿人の
あこがれ

日暮れて
ぐあっ ぐわっ ぐぇっ がっ
おたけびあげやおら

街並み山脈ふちどる
深い朱の残照の祈りに
十字を切り
ゆるやかならせん曲線
舞いのぼり

羽ばたきに風
しゅるるるるるり
どうしてこんなに
美しく
鳴る

どこへゆくのか
どこでねるのか
いつやすめるのか

水と土と空
どこへでもゆける
短いいのち
生きてゆける
そんなのカモの勝手でしょ
カモのことはヒトなんかにではなく
カモに聞け

水面もなにももうみえない闇に
散りばめられ
星空

カモたちの
飛翔のあやとり
結ばれたのか

ぶわっ ぼわっ ぶわっ ばっ
ぐあっ ぐわっ ぐぇっ がっ

遠いむかしから舞いおりてくる
カモ座の微かな光に

交わしあう
カモ語の
伝説と


美しく愛しく
密やかに

羽毛に
羽毛
かさねて

エメラルド輝く
星座になる
こよいも




※読み 茜雲: あかねぐも。山脈: やまなみ。
愛しく: かなしく。



「 カモのお話 」( 了 )

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