高畑耕治の詩


りんどう雪の、紫の夜に




  りんどう雪


あの日あなたは
花でした
淡い紫
ゆれました

ときはゆき
いまは雪

みえないあなたは
わたしの
真綿

舞いおりわたしの
頬にふれ
ほっ
 と咲き

しずかに
溶けて
ゆきました




  同 反花



雪の眠りの夜がいい
うす紫の

しずかな花の
鈴の音が
いい




  雪紫 短唱



夜の彩
花とみまがう
輝きの
紫をおび

 りんどう りんどう
 星の花

流れはねる
滴の光
さらさら まとい惑い
ひるがえり

 りんどう しんしん
 雪の星

花びらうっすら
ひらく星すがたの
くちびる
ささやき
舞いしきり

 りんどう りんどう
 雪の花
 りんどう しんしん
 ひかり
 紫

しんしん
しずかに
咲きつもり
澄みきり
氷り果て

夜空と
消えて
ゆきました

とおくへ
溶けて
ゆきました




※参照 中原中也「生ひ立ちの歌」
  T( 初連 ) 

 幼年時
 私の上に降る雪は
 真綿(まわた)のやうでありました

※読み 反花: はんか。音: ね。
 雪紫: ゆきむらさき。彩: あや。



「 りんどう雪の、紫の夜に 」( 了 )

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