高畑耕治の詩


月の光に




草の間の透きとおる羽根も
ふるえ澄みきり
輝き翔はじめ

地も空も
純音

せめて今夜かぎり
最期の晩さん
痛みだらけの星傷も
ふくよかつややかな
おだんごのように



もう目を閉じてしまいそうな
絶望のふちの諦めの
暗灰色の涙を
せめて

悲の
銀の滴に

こよいこの世にも
満ちる月、あなたから
あふれこぼれる滴り
望みの

美の
金の滴に



金の滴ふるふる夜には
どこにかまだきっと
あるはず

月のウサギのいう

しあわせ
おとずれるはず




※参照 金の滴ふるふる: 『知里幸惠(ちりゆきえ) アイヌ神謡集』
 ふくろうの神の自ら歌った謡「銀の滴降る降る降るまわりに」
 岩波文庫、補訂新版、二〇二三年。

※読み 間: ま。翔: かけ。純音: じゅんおん。暗灰色: あんかいしょく。



「 月の光に 」( 了 )

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