高畑耕治の詩


山のしづくに




真夏のヴァイオリンの、
終楽章の
調べの雨に洗われる
夕べ
野辺に澄みのぼる
いのちの、
秋の


終わりと始まりの、
極まりと高まりの
いのちの音
重ね
聞きわけられないほどに
みみりりり星空へ
せみもこおろぎも

美美美
 りりり
  詩詩
 詩死

うつそみの
幻夜、

美しく
 しづく
暁に




※読み 音: ね。幻夜: まぼろしよ。
 うつそみ: ウツセミの古語。
 暁: あかとき。アカツキの古語。

※本歌 万葉集巻第二
大伯皇女(オオクノヒメミコ)
吾(アガ)背子を 大和(ヤマト)へやると さ夜ふけて 暁(アカトキ)露に 吾(アガ)立ちぬれし

うつそみの 人にある吾(アレ)や 明日(アス)よりは 二上山(フタカミヤマ)を 弟世(ナセ)と吾(アガ)見む

大津皇子(オオツノミコ)
あしひきの 山のしづくに 妹(イモ)待つと 吾(アレ)立ちぬれぬ 山のしづくに



「 山のしづくに 」( 了 )

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