猛暑ゆらめく歩道
横断するセミの幼虫
自転車にひかれそう
掌から街路樹へ
サヨウナラ
陽は沈み
木肌をつかみ
闇のなか
呼吸しているでしょう
ときをまち
殻は割れ
ちいさな背から
ひろげるでしょう
天の川
夜空ふか紫
透ける星々
まばゆい
羽
時空は痛み
からだも思考も感受性も
傷口
生気を失い
干からびはじめる
がらがらの殻の
割れ目から
まだしらない、
真
みつからない、
善
ここにはない、
美
ここではない
どこにか
あるはずの
むこう
無の世の
創まり
遥かな畏れの
宙の裂け目
天の川へ
飛び込み
星々の
飛沫をあげ
羽化する
天の川にセミしぐれ
真夏の天の、聖誕樹