高畑耕治の詩


千鳥の海の物語



 千鳥


海のなみ空のなみ白の果て

波と潮騒、
チドリたちと
遊んでる

海のしらべ
風のしらべ
砂のしらべ
ふうもん

波のおと
あしあと

潮風に抱き寄せられ
寄せ返す波に誘われ
帰る街も
人ごみも忘れて
チドリたちと
ゆこうどこへ
ゆこう




 星あわ



海は物語

夜空のなぎさにも
白い貝殻


ひとつぶひとつぶ
ひかり

いつしか
なみの
あわ

くりかえし
波に洗われ
砂に埋もれ、また
現れ夕陽に
かがやく
貝殻に

ほんのすこし
むかし
いのち
生きていたんだ と

かたちまねた
手のひらに
そっと
つつむ




 貝殻銀河



死んで貝
貝殻のかけら
夜空の海まで
昇天し

流すのか

銀河巻貝
悲しく
泣いて
この砂浜にまで
零れ落ちたのか

どちらもほんとに
あったこと

夜空とこの地の
波うちぎわの
きらめき と
潮騒ばかりが
伝えてくれる
今も昔

忘れられない
物語




 風紋



どこまでも
なぎさ

海風
波と砂に
くちづけ
風紋の
五線譜に
砂色音楽
いちどかぎり
くりかえし
しるす

さようなら

波うちぎわ
ふりかえれば
波と砂の
おんぷ
あわつぶ
奏であう
星 星
 星

 星
星音の
天の川
悲しい記憶の
お花畑

はげしく
どうしようもなく
咲き散り

きらめく




 風鈴



岸辺の樹林の
緑にかかる
うす紫の
貝殻
ヤマフジの
風鈴

風にゆれ
風にぬれ
波色の
花房の


ゆららゆらめき
水平線の
あわいへ
とけて
ゆく





「 千鳥の海の物語 」( 了 )

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