高畑耕治の詩


戦火の星の、花まもり歌



 星の花まつり


菜の花
咲いた


そう
モモの花も


( 泣かせ悲しませ苦しませ散らす
 ものではなく、)

コブシもモクレンも
もうすぐ
ツツジ
ユキヤナギも
サクラも
やっと

咲いて
くれるわ

( 愛して、
 まもりぬくものだろうに。)

生きていれば
生きてゆけば
生きられれば

( 立ち向かいたかかう相手は
 戦争をまき散らす、
 ココロナクシタモノタチだろうに。)

いま
宇宙草原には
いろとりどりの
野の星花
樹花銀河

( 闇にこそ無量光ともひとのいう。)

あちらこちらに
醜美まばゆく
ヒトミシリ花

死と生の妖星
詩の妖精
流れさまよい落ち
夭逝する
涙花

( 天空あおぎみれば
 舞いおりてくれるのか
 美しすぎて
 みえもしない
 透明花 )

生き死に
死に生き
いちめんに
うっすら
舞いしきるよう

( 凍りつくほどに
 沈黙する

 愛おしい
 子守歌 )

心まもり
花まつり

ひとひとひとひと
はなはなはなはな

はるかな花がたり
ゆきすぎて
ゆくよう




 海辺の鎮魂花



一年を生き一年を生き
生きられる一年ならまた
生きて
逝く

想いに
重みに
花びら
下げ
捧げ


こぼれ
落ち壊れるまま

遠い
あの
海の
あなたへ




 戦火の子まもり歌



「 この星がひとまわりするあいだ
 夜も昼もわたし
 いのりながらも
 ゆううつなのです

 宇宙空間の球体にあおく
 てらしだされかがやく
 海にいだかれた陸に
 夜も昼もやむことなく
 歯軋りし襲ってくる
 戦火

 ゆううつなのです
 眠ることをゆるしてくれるひろくふかい
 星空にいだかれていながらも
 やまない人間の
 キョウキに
 悲鳴に

 夜も昼も夜も昼も
 やすまることなく
 まわるまわるという
 星のうえ
 やすめるはずもない
 ひととおなじ
 いまにいて
 あまりにも
 ゆううつなのです

 くる日もくる日も
 戦火ばかり 」

 ❀ ❀ ❀

嘆くだけなのなら
ねむりなさい
ねむりながら
なんにもならない
ゆめにいのりを
灯しなさい

火はけせるもの
けせずともやがて
きえるもの
あの星ですら
ねむり
きえるのですから

いくつもいくつも
いつもいつも
いのりをせめて
灯しなさい

みずからをも
凍えさせないように
とおといものを
吹きけされて
しまわないように

星の瞬きを
ひとのおもかげを
胸にだきあたため
あたためられ
しずかに
ねむりなさい

ひとは
ねむりながらも

星の音楽を
旋律をも
奏でられる
愛をしる生きものでも
あるはず




*読み 星花: ほしばな。樹花: きばな。涙花: なみだばな。
    鎮魂花: ちんこんか。逝く:ゆく。陸: おか。
    キョウキ: 凶器、狂気、狂喜。



「 戦火の星の、花まもり歌 」( 了 )

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