高畑耕治詩集『愛のうたの絵ほん』


さらさら


宝くじ 掘っても掘っても宝なく
競馬の葦毛の穴馬には足蹴にされ
パチンコ玉の逃げ足はダービー馬並みだと涙し
親をかじりつくしたのである
姉きにせびりつくしたのである あげく
サラ金にかじられた

この頃 うたが聞こえる
サラ金サラ金さらさらさら
サラ金サラ金さらさらさら
毎晩 怨念にうなされる かなしい
おきくさんのうたが聞こえる
いちまい にまい さんまい しまい
一枚足りなくても紙があるうちは
笑えたおれも もうおしまい
じゃらじゃらあふれだす パチンコ玉の
歓喜のうたはどこいった
すかすかの財布をふれば
弱々しげな 一円玉の
さらさら
おきくさんのうたが聞こえる
いちえん にえん さんえん
円高だかなんだか
枚数かぞえてからにしてほしい
おきくさんの苦しみもしらないで
解説なんかやめてくれ
かわいい娘( これはいつもの駄洒落じゃない )
父さんは倒産しそうだ( 会社なんてないが )

お父さんお金に頭むしばまれてる
娘 笑う
お金なんかぜんぜんもたずに暮らしてるひとは
世界中いっぱいいるのよ
やさしい言葉にはっとして
目をそらすと 電線にすずめ
食ってやろうか?
涙のプリズムで屈折したのかこころに痛いすずめの
ちゅるちゅるる( 金金なんてわめいているの人間だけよ )
かわいい無邪気な姿に羞じたのである 金のこと
ちょっと忘れたのである
すずめと一緒に
うたったのである
借りて返して借りて返して借りて借りて借り借り借り
生きることって借りること でも
少しぐらい返したい
にっちもさっちもいかなくなって
火の車
転がりながら燃えあがれ
あちちあちちと跳ねあがれ
炎吹きだし飛びあがれ おきくさんの
人魂になれ いつかまっ赤な
太陽になれ 黒焦げの
いまはすずめの焼鳥だけど
灰のなかから よみがえれ
火の鳥になれ 舞いあがれ



「 さらさら 」( 了 )

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