高畑耕治詩集『愛のうたの絵ほん』


あのやまのむこうに


あのやまのむこうに
しくしく泣いてたおさないおさげのあなたがいる
白く染まったあの頂のむこう
ふりしきる雪のさむさにふるえてた あなたがいる

すずしい風にすすきが穂をたれ
あきあかね 舞う河原
ひかる流れのむこうに眺めた
あのやま
あなたはいつもなぜか
とおい目をしていた

すすきのまねして細いくび
おりまげ水にくちづける
白いとり やわらかな水のひかりに
ささる二本の足だけ黒く
そばで鳴いていたからすも
夕暮れのやまにかえるころ
わたりどりはかえれない ふるさとは
あの空のむこう
あんまりとおい

地図をみてはじめて知った
こどもの頃あなたが あのやまのむこうから
あの白い頂にむかい泣いていたこと
わたりどりだけが
あのやまをこえ
おさげのあなたと
雪解けのひかりを瞳にたたえるあなたを
みまもっているのか

あのやまのむこうに
しくしく泣いてたおさないおさげのあなたがいる
いま微笑んでいる あなたがいる



「 あのやまのむこうに 」( 了 )

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