高畑耕治詩集『愛のうたの絵ほん』


まんじゅしゃげ あげはちょう

おともなくみえない風に
白と黄いろのふたりのちょうはもつれあい ゆれてまわって
はなれるようではなれられず くっつくようでくっつけず
はらはら花へおりてゆきます でも
赤いまんじゅしゃげだけは
あげはちょうにあげましょう
ばったもかまきりもみんな あまいにおいにぬれたみつ
まんじゅしゃげが好きですけれど

まああん まん まん
まんじゅしゃげ どうしてそんなに
まっ赤なの ちょうちょがほんとに
好きだから ちょうちょもあまい
みつが好き だから
まっ赤な まんじゅしゃげ
あげはちょうにあげましょう

こども頃わたしがわけもわからず好きだった
このうたは まんじゅしゃげのひみつ
この花の愛のうたです

こどもの頃まんじゅしゃげは青虫でした
あかるい青虫でした けれどあんまりみんなに嫌われて
さなぎになると なんにも食べられなくなりました
じっとうごかずかなしみました 愛されない
あまりにふかくながいくるしみのときも
やがてすぎさり はじめてちょうを愛しました
さきにとびたち空をまうあの
あげはちょうを愛しました 愛するよろこびのちからで
生まれかわるとき
花びらのようなはねをひらこうとしたとき うれしさのあまり
はねをあげてしまいました
青虫だったわたしを笑わなかったおんなの子
やんちゃ坊主にふみつぶされかけたわたしをまもってくれた
ひとりぼっちの泣き虫おんなの子に
青虫のたましい ほほえむちからを
はねひらくこころをあげてしまい
花びらのひろがらない けれどもうつくしい
花になってしまったのです

ほんとははねがほしかったのです
とびたちたい思い あのあげはちょうと
愛しあいたい思いは とてもつよくてどうにもならず
あげはちょうの ほそながいくち
赤いつるになり いくつもいくつも
空にむかってのびてゆきました
とべないあげはちょう まんじゅしゃげは
かなしみにまけませんでした けれど目のまえで
さなぎのときからひそかに愛したあの
あげはちょうがかまきりに食べられてしまったとき
なんにもできず泣きあかした かなしい日々 いつか
青空いろのこころに沈んでゆく太陽の血がにじみ
赤くそまりました ふかく青い海が
赤くもえるように
しおからい涙は
あまいにおいにみちた
愛のみつにかわってゆきました

おともなくみえない風に
あげはちょうははらはらと
まんじゅしゃげにおりてゆき
はねをあわせて祈っています
つるとつるはしずかに
くちづけあっています
田んぼのあぜみちでは今日も
くちをおおきくあけ こどもたちがうたっています

まああん まん まん
まんじゅしゃげ どうしてそんなに
まっ赤なの ちょうちょがほんとに
好きだから ちょうちょもあまい
みつが好き

あのおんなの子もいまはもう
やさしいおねえさん
ほほえみかけられてこどもたちはとくい気に
なおさらおおきなこえでうたいます あれ?
すこしまちがえた子がいます

だから
まっ赤な あげはちょう
まんじゅしゃげにあげましょう



「 まんじゅしゃげ あげはちょう 」( 了 )

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