高畑耕治の詩


おちゃめな月紅葉



三日月滑って
空のうえで
空をみあげて
寝ころんでいた

夜空では月蝕中

「 夢も希望もないあなたに
 ふくらむ希望を
 望月へと
 ふくらむ姿を
 見せてあげる

 影があるから
 わたしはふくらむ
 暗い闇夜で
 わたしはふくらむ

 ひとときばかりの
 影風船であろうと
 望月へ
 わたしはみちる

 なんどでもしぼみ
 ふくらめ
 闇夜にもやがてまた
 満月 」

空に
うかぶ
りんかく
この星の
横顔


「 まわるわたしはほんとはまるい
 でこぼこでたしょう
 ゆがんでいようと
 欠けてみえようと
 新月も三日月も半月も
 おちゃめな影の幻です

 影に蝕まれ欠けて逝くのを
 闇にのまれ沈んでしまうのを
 恐れなくていい

 秋の山なみがほらいま
 紅葉してゆくように
 星のかがやきをあび
 影も染めてあげなさい

 それでも星はまわる
 まわる星はまるい
 ほんとはわたし
 いつも満月

 影も闇もおちゃめな
 うつろい 」

月食にさとされた
夜でした

こころも月蝕中

月紅葉
染まる夜




*読み 望月: もちづき。月紅葉: つきもみじ。



「 おちゃめな月紅葉 」( 了 )

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