高畑耕治の詩


悲歌



あの夜にもこの夜にも
ひと想い

泣くことばかりがわたしの

すべてでした

あの世でもこの世でも
花と

ゆらめくことばかりがわたしの



  朝のひかりにも
  夜のひかりにも

  花の瞳はひっそり
  ぬれるもの



かみのものともあくまのものとも
みわけがたいめぐみとものろいとも
わかりようもないおうぼうにさらされ

あの夜にもこの夜にも
あの世でもこの世でも

しおれねむり
めざめゆらゆら

ひと想い

泣いているばかり
咲いてるばかり



  生まれたとき
  芽生えたとき
  目をみひらいたあの日
  であえたよろこびの日
  から

  さようならの
  じゅんびの
  花びら

  ひとひらひとひら
  てのひらで
  ていねいに
  そだて

  だいて

  ちるその日そっと
  むかえ

  なみだながす



わたしは生きてゆくかぎり咲けるかぎり
あなたにはあなたのそばでは
微笑むけれど

笑うという
みずみずしい
優しい気持ち
ほんとはもう
なくしてしまったの



朝なのか夜なのか
うすくらがり
ひそやかな
美しく愛しい
スミレ
うすむらさきの
愛する花のひとは

渇ききった
声で
さびしく

話してくれたのです



ぼくも
あなたから奪われた
笑いなど
忘れても失ってもかまいません

から



  咲いていてください

  どうか
  くださいますように



夜にも朝にも
この世にも
あの世にも




*読み 悲歌: ひか。夜: よる。愛しい: かなしい。



「 悲歌 」( 了 )

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