高畑耕治の詩


無限ドロップス



冷たいまなざしでふりかえる
人類史
まともな世界の詩人は現世の
落伍者だった。
貧乏人
底辺者だ。
金持ちには邪魔もの
反抗期を生涯抜けださない余計もの。
なんて情けない
悲しい生きものなんだ。

二十歳でわたしは落伍した。
落ちこぼれ
ドロップアウト
ドロップス。
あめ玉のかわいい響き。
レールをおりた。脱線した。
意志的に踏み外した。
下方向へ翔んだ。
無重力遊泳で惑星を周回してもどった
ふりした。
三六〇度エビ反りになって、それでも
生活した
詩を書いた。

詩人は金持ちの敵
貧乏人の友
弱いものの味方だ。
アミターバ遥かな嘆きの星
ピエタの悲しみの星を球乗りする
ピエロの仲間だ。

力にとらえられるな
よろめきふらつき
無方向へのでたらめな
無限ドロップス。
自由へ
跳ね散れ。

白じらとした宇宙を
周遊し
泣き
さまよえ。
たどりつけそうもないゆきたいところへ
ゆけ。




 追伸



ぬぐいまぶたあければ
ちらちら頬をくすぐっていたのは
おびただしくまぶしいほどの
雪片

ひとひらひとひらは
天の川のたわわな透明ブドウつぶ
星つぶ
涙つぶ
氷つぶ

かとおもえましたが
わたしの瞳の水滴までもが
凍りついていたからで

どうやらほんとうは
暗黒宇宙樹の
黒々とした枝枝に
結晶し
輝く
銀河群

悲しみの
極点の
葉むら

こなたあなたかなたへ
果てしなく
暗黙する
宇宙樹氷の
原生林。

たちすくみ
目をみひらき
息さえ凍らせるばかりです。




*読み 宇宙樹: うちゅうじゅ。



「 無限ドロップス 」( 了 )

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