高畑耕治の詩


めざめ



雨音?
小鳥のさえずり?
せみかな?

ねむりの海底うかびしずみ
まどろみの波まの目覚め
閉めわすれた枕もとの窓
しめやかな明け方の空気

鳴いているのは秋
草むらの虫たち

ありがとう
ねむりもせず
看病していてくれたの?
しらずねむりに落ちた真夜中のまま
まどろみもせずすぐそばで

夜どおし生の渇きを
交わし満たしていたの?
星ぼしと瞳みひらき輝かせて

生まれはじめて母にみつめられ
目をみひらき母をみあげた目覚めの日
どこかの地球
ちがうせかいで

わたしは目を閉じ
ねむりに落ち
さよならしたのだろうか

みまもられみとられながら
雨に小鳥にせみに虫たちに星ぼしに
母に愛するひとにかみさまに

ひとり目を閉じ目覚めのないねむりに落ち
さよならするそのとき
わたしはみとられたことすら忘れ
しらずみまもられ目覚めるのだろうか

さよならした愛おしいせかい

雨の音?
さえずり?
せみ?
こおろぎ?
えんま
あくま?
かみさまほとけさま
かんのんさままりあさま?
母?

星?
涙?
波?
海?

きみ?
あえたの?

うまれる?
ねむる?

暗闇の星の傾きかげん
まぶたのおく瞳の
ひかりの溶かしかげん

枕もと
愛もとめあう
虫の音

目覚めればたぶん
ときは朝
四季はコロナ
戦場の星

もどれば
ゆめ?
ちがうどこか
とおいどこか
しらないどこか
なつかしい
たいせつなひとに
愛に
ゆける?

ねむりたい

あたたかな
ゆきのせかいに
めざめたい




*読み 雨音: あまおと。虫の音: むしのね。



「 めざめ 」( 了 )

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