高畑耕治の詩


白い花



おやすみ。
枝先ちらちら
まばゆく溶けてく
冬の純白
雪の精

枝風にゆらら
まどろみのまぶたまつげ
こぼれる微笑みきらきら
白の純真

おはよう。
こぶしの花





  問い

 生まれることは、
 生きる機会を等しくえる始まりではなく、
 差別の始まりなのでしょうか?

 生まれたものが等しくえる機会は、
 死ぬことなのでしょうか?

 生まれてきたのなら生きるための機会を、
 等しくえられるのが、
 人間の社会ではないのでしょうか?





  おこない

 そのような人間の集まりがあったのか、
 あるのかありえるのか、
 誰も確かにはいえません。

 ただそのことをねがいおこなう機会だけは、
 等しく誰もにあります。

 ねがいおこなうことが、
 生まれてきたものの群れのなかに生まれてきたにすぎないものを、
 人間らしくもその名に値しない物にもします。

 ねがいはおこないです。

 それは人に生まれてきたものあなたにできること、
 弱いものあなたにしかできないおこないです。

 おこないのあらわしかたは等しく誰もに
 自由です。

 等しくえる死までの等しくないあなただけの
 自由です。

 圧制に抗い殺される
 自由な人の死に、
 こころ痛め悲しみ励ましとして
 自由を。

 こころの
 白い花を。





季節すこし間違え
早咲きして
ぶり返す寒さに

耐え
待ち
薄汚れても

こぶしの


純白

自由を
仰ぎ

軍のやましい銃弾に
倒れても

誇らかに
香りたかく
清らかな

あの人たちの
優しい思いの
とうとい
かけがえのない

青空へひらく
いのちのよう

花を愛する人は

散り
失われても
愛する人

白い花を

けして
忘れない




*読み 微笑み:えみ。



「 白い花 」( 了 )

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