高畑耕治の詩


みかづきなみだ、
     バラード




 第一番 月色氷景色



みずみずしく
ふたたびみたび
あらわれうち寄せ
きえてゆく
湖のやわらかな
水辺の

三日月の黄の
岸辺の
水音

泣き
洗われ
静まりまた
浮かべ宿し
ほとりに
湛え
こぼして

ぽとり
ぽつり
ひとり

冬のやみ夜
かたくかわき
凍えてしまう
瞳と

添い寝し
うるおう
ひかりの

波音かそやかな
さまたげられない
眠りの湖の
波まの
涙にどうか
なれますように

コロナの真冬
凍りつく夜空の
湖面の
氷に映して
三日月だけが
伝えてくれた
あなたの

樹氷にかこまれた
湖面の
ざらつく
氷雪まぶされた
宇宙景色の

ふかくの

いとしい
月色の
水音





 第二番 星砂波音



三日月あんなにぬれていたのは
あなたのせいではありません

あなたのしもまぶたに満ち
またたくたびあふれおちる
なみだのせいではありません

三日月しくしくすすり泣くのは
あなたのせいではありません
みみたぶのおくのどのおく
むねのおくにうちよせるくるしい
おえつのせいではありません

暗黒の新月の瞳さえ
ふりかえりふりむくと
憂いの翳りのまるみに
虹のかたちの
ふちどり

なみだみかづき

一夜人世
ふくらんでゆく
みちてゆく
悲しみは

太陽のせい

けして
まつげにふせた
瞳の
なみだみかづきの
かなしみの妖精
優しい
あなたのせいではありません

極悪外道汚濁異臭の、
白日悪夢、
けして、
あなたのせいでなんか。

けれども
この世この夜
この地月夜空どこにか
わからず

みあげること
だけは
しよう
あなたと
ほんとうに

美しいもの

なみだみかづき
ゆがみ
にじめば
宙の黒壁
ゆらめき
まばゆく
虹いろ音楽の
おおろら
うちよせる
星砂の
この浜辺で

紫のそのむこう
おぞんそう
切り裂き
射される

みえずにあり
放射され
曝される
線線線
とらえられず
浮遊し
付着し
とらわれ
むしばまれる
ウイルスウイルス
ウイルスに
とりかこまれても

だいすきな
海のあおの
まるみを
抱き
きえる
あかい
夕映えの
浜辺で

生まれた

ここがあなたと
生きて
いる

生きて
ゆく


瞬きの






* 第一番・読み
水音: みなおと。月色氷景色: つきいろこおりげしき。
氷雪: こおりゆき。月色: つきいろ。

* 第二番・読み
星砂波音: ほしすななみおと。 一夜人世: ひとよひとよ。
宙の黒壁: そらのくろかべ。曝され: さらされ。
極悪外道汚濁異臭: ごくあくげどうおだくいしゅう。
白日悪夢: はくじつあくむ。夜: よる。
この地月夜空: ちつきよぞら。時:とき。

*参照
八木重吉の詩「うつくしいもの」から抜粋。
どこにか「ほんとうに 美しいもの」は ないのか



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