高畑耕治の詩


十五夜ソナタ



 第一楽章 恋歌四首 アンダンテ


夜空たかくそんなに澄んでひとり

きみは病んでいるのか

そこにあるその姿そのままできみはすてき
十五の少女の耳たぶにそっと
好きとささやく美しい


痛みと怖れをしり傷つき壊れはじめても
ふくらみ満ちてやまない光に
照らしだされまきちらす
十五の少女きれいな


ヴェールにも傘にも隠されず夜の遠目に
あゆむ花嫁のすがたまばゆい



 第二楽章 悲歌 アダージョ


悲しいと
初恋のひとは
いっていた
このまま
朝がこなければいいのに
月の光ばかりの
夜がつづけばいいのに

死にたいと
おしえてくれず
月の光と
逝ってしまった
あのひとは

どこかで
いまも
あの光と



 第三楽章 ロンド アレグロ


ただ暗くなんの意味も見つけられない虚空に
傷だらけの肌むきだしにあばきだされ
モノクロームの痛ましい拡大写真の
残像
こころにすりつけられても

こよい遠く
ウサギのえくぼ優しくうかべる月きみの
頬が好き

国境の壁にも秒針にも妨げられない月きみの
澄みきるソプラノ

光の歌声の
透明な糸が織りあげる柔らかな
絵のない絵本に

にんげんが紛れこませる
戦争と暴力と汚染とコロナの
汚ない悲惨なページを
閉じて

開かれる
真っ白な果てのない紙に

あなた色の
きれいな光のクレヨン
いっぱいに
ぬられ
自由に
描かれ

絵本は優しく
読みつがれてゆき

この海色の星も
あなたと
美しく
かがやきつづけますように

欠けて消えてもまた
生まれ

澄みきり
十五夜

子猫の目のように
まるくきれい

大好きな




*ふりがな 恋歌:こいうた。夜の遠目: よるのとおめ。(夜目遠目笠の内)。
悲歌: ひか。描かれ: えがかれ。

*参照
・「絵のない絵本」アンデルセン
・ソナタsonata:複楽章純粋器楽曲。奏楽曲
・アンダンテ Andante: 歩く速さで
・アダージョ Adagio: ゆるやかに
・ロンド rondo: 輪舞曲
・アレグロ Allegro: 速く



「 十五夜ソナタ 」( 了 )

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