高畑耕治の詩


かたつむりと歩むみち



背負い生まれた宿命のこの十字架
ではなく渦巻く殻から逃れようと
あれから紫陽花のみちを
雨の日も風の日も
光に干からび葉陰にやすらい
どれほど這ってきたことでしょう

ようやく悪の生物
にんげんのさばる
魔界から遠ざかり
悪い夢の恐怖の連続から
目覚めたのだと
雨上がり
つのをのばせば

そこにまた
にんげんが
あなたがいて



ひさしぶりに
会えてうれしく
話しかけたわたしに

答えてくれた
かたつむり
あんまりにも
悲しそうでしたから

梅雨ぞら
傘ばかりを
せめてもの
十字架として
背負ってゆくしか
ありません
輪廻にめまいし
くるくる
くらくら

紫陽花はしめやかに
雨に息するばかり

かたつむりのきみも
にんげんのざんねんなわたしも
雨に
生かされ
逝かされ

夢にいま
いるのでしょうか
夢に
ゆくのでしょうか
どこに
ゆけるのでしょうか
夢みずにもう
やすめるでしょうか

この重い
背負い生まれた
にんげんの
殻からぬけだしたいんです

雨音は優しく
なにも話してくれません

でもわたし
紫陽花も
かたつむりきみも
好きでした

悪夢のしもべとして
這いまわるばかりの
わたし
にんげんにさえ
透明な

水魂

くるまれ
励まされ
かたつむりに
うちあけていました

どこからきて
どこへゆくのか
この美しい

紫陽花のみち
雨音のみち




*ふりがな 雨音: あまおと。生物: せいぶつ。逝かされ: いかされ。水魂: みずたま。



「 かたつむりと歩むみち 」( 了 )

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