高畑耕治の詩
波打ちぎわで
― 還我未生時 王梵志
かえせ
かえしてください
かえしてくださいますように
どうか
と
より弱く
静かな切実な思いのさざ波
砂浜の
終わりのないメビウスの
輪廻する波打ちぎわで
くりかえし泡立ち
つぶやきやまない
*参照 王梵志: おうぼんし。中国・唐代の詩人。
引用出典「求道と悦楽 ‐ 中国の禅と詩」入矢義高。岩波現代文庫。
( 八行詩 )
我昔未生時
冥冥無所知
天公強生我
生我復何為
無衣使我寒
無食使我飢
還尓天公我
還我未生時
( 大意 )
私が昔まだ生まれていなかった時。
暗がりのなかなんにも知らずにいた。
けれど天公( 造物主 )は強いて私を生み。
私を生んで何を為したか。
衣服もなく私を凍えさせ。
食料もなく私を飢えさせた。
天公( 造物主 )あなた( なんじ )に私を還すから。
私に未生の( みしょうの、まだ生まれていなかったあの )時を還せ(かえせ)。
「 波打ちぎわで 」( 了 )