高畑耕治の詩


星の海辺の幻楽章



冬星空のもと
眠り落ちる時のあわいに

鼓膜から鼓動へ
流れくるままに流し込んだ
第七交響曲の
流れ星の
音符

目覚めのあとの
雨曇りの憂鬱な世界にさえ

雨粒まじりの
星粒
弾け
哀しく
響きつづける

ヴァイオリン
フルート

微かな語音の
旋律の


生まれるまえも
いまも
死んだあとも

宇宙の海の母の
潮騒の音色の
あわだち

かわらず
愛しい
恋人

海辺に寄せ帰る波の輝きのように

新月の闇へと色彩を失くし退いてゆき
満月に照らし出され緩やかにふくらむ
階調なめらかな
満潮のように

球面を沖あい遠く回遊し
四季の風と星座とともに
めぐり還ってくる暖流のように

思い出はなぜか
かえってくる

音色に沁み
鼓動をうち
浮かび沈む
旋律に

弾け散りきらめき
波うつ潮の
香りにとけ
髪に激しく
吹き寄せる

忘れられず
悲しく
痛い
あの別れの時の
後ろ姿で




*ふりがな 幻楽章:げんがくしょう。冬星空: ふゆほしぞら。
  雨曇り: あまぐもり。雨粒: あまつぶ。哀しく: かなしく。
  語音: ごおん。宇宙: そら。潮騒:しおさい。
  音色: ねいろ。愛しい: かなしい。満潮: みちしお。



「 星の海辺の幻楽章 」( 了 )

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