生き物としての日用の糧
獲る労働に苛まれて帰り道
輝く星空
見あげる気力も希望も夢も薄れ疲れ凍えて
かわいい子猫も優しい恋人も
きれいな紅葉も月もなく虫の音も鳴かず
さびしく悲しく苦しく索漠と渇いて
このまま冷たくつながる地の底に
くだり逝けそうな暗がりの坂道に
息する気配ふっと
左肩まぢか
つづく垣根の真みどりに
寒椿
真あか
あなたたちの
赤 あか
あか あか
あか あたたか
たおやかな
笑み
灰色の魂の
埋み火さえ
焚き起こされ
冬にも灯火
赤 あか
あか あい
寒椿
赤は血の色
地の生き物の
約束
おぞましい苦痛悲痛
流血ではなく
殺すために生きるのではなく
生き延びるために殺すのではなく
結ばれるいのちの
歓喜の
寒椿
赤い花
愛の花
咲きつづけますように
夜の大海原の果て遡りひろがる
星ぼしの彼方に
人にはとらえられず
太古から
花咲き揺らめく
ツバキ星雲
真空にまき散らされてゆく
星雲の吐息の花びら
透きとおる紅の海月ひたひた
時空の深海を音もなくさ迷い
この星の垣根の
寒椿あなたたちにいま
眩しくくちづける
潮騒のなぎさの波間
人魚のジュゴンも訪れ
星海からうちよせる
遥かな調べを
ともに歌う
寒椿色の
唇つややかな
珊瑚あなたたちを
愛しみ
人という殺戮嗜好種が
戦場にしたがる海で
生き物の多様性
生き埋めにし
破壊し絶滅しようとする
美しい海で
生きる愛しみ
ともにうたう