高畑耕治の詩
愁花
秋花
萩の花尾花葛花なでしこの花 女郎花また藤袴朝顔の花
山上憶良
七いろの
きれいな花にあらわれる
ひとはきたないばかりでも
静かな花には
あらわれる
髪に頬に耳たぶに
川風のやわらかさかんじられたら
まっしろな画布のこころにまだなれる
花いろに染められゆれる
秋の野にまたなれる
萩
うすももしなだれまたたく花かげに
あわみどりしのびやかな葉かげに
しおれうっすら枯れてうつくしい
萩の花
秋画
極彩油絵
海の波まに
真紅真白の
曼珠沙華
あわい空の水彩に
秋桜
透きとおる風のまにまに
音色うっすら
萩の花
反歌
海にも空にも地にも恐喝しあう核狂気
秋華
幻視曼珠沙華
秋果
朝風にもむしの音
秋深み
梨の実たわわ
*参照 万葉集(やまのうえのおくら、秋の七くさのうた)
花(いろ):ハギ(淡紅)、ススキ(金銀)、クズ(夕焼紅紫)、
ナデシコ(頬色)、オミナエシ(黄)、フジバカマ(白薄紫)、
キキョウ(青紫)。
*ふりがな 愁花:しゅうか。秋花:しゅうか。秋画:しゅうが。
極彩油絵:ごくさいあぶらえ。真紅真白:しんくましろ。
曼珠沙華:まんじゅしゃげ。
秋桜:コスモス。
秋華:しゅうか。幻視:げんし。秋果:しゅうか。音:ね。
「 愁花 ( しゅうか ) 」( 了 )