高畑耕治の詩


傷としわ



傷つくために生きているようなものだ

痛みにたえてしわくちゃに
産みおとしてくださった
母の
すべすべに肌を
あたためてくださった
手のひらとゆびの
記憶だけに励まされ

ひとすじひとすじこころに
傷をひきながら

痛みのしわを
ひとすじひとすじ愛するひとと
手のひらとゆびで
けしあいたいとねがいながら

傷もしわもすっかりきえて
生まれるまえに生まれる日まで

かなわずただ
ひとすじひとすじ
きざまれるばかりの毎日でも

のぞんでゆくかぎり
傷も
しわも
わるくない

雨あがり
道ばた瞬く
紫陽花に
夜あけの
星に
つたえるしかなくても





「 傷としわ 」( 了 )

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