高畑耕治詩集『愛(かな)


こんどおむの空

開閉式の最新ドーム
丸天井を開いた光のなかで
競技に汗ばんでみても
なんだかもやがかかってる
こんどおむ色の空
青空との交わりを
さえぎる皮膜 灰色の
ガスの 皮膜
病をおそれ 危険におびえる
みじめなふるふるの
しわだらけの皮膜ごしに
精子も乳も
かたくなな白さを失い
生と死の切り口 うずく
傷口がかくされてしまうとき
純粋な色はどこにもない

ひとり健康でいるよりひとを思い
病んでいたいと教えてくれた
優しいひとは死んでしまった
こんどおむごしにしか
星も海も青空もみえないいま
飢餓と戦争と競争に苦しむ子供たちの声は
きこえない だれにもさしこむ
朝の太陽
空にくっきり開いた入口に
すいよせられ
息をとめ 舌をさしいれても
とどかない子宮
あおくない地球

おねえさん少女のまま逝ったあなたの
ちいさな白い乳房にうかんだ
きよらかなももいろを
もう一度すわせて
ほんとうの朝焼けをもう一度みたいから
くちべにをしらないくちびる
ひたひたもえあがる舌さきの
ふるえるぬくもりにふれていたいから
ちっそやふろんを吹きあげるより
声にならないねがいを吹きこみ
風船のように空をふくらませ
わってしまおう
騒音に慣れしたしんだ鼓膜が破れ
音をなくした痛みに
だれもの血が波うつ律動をききとろう
破れたごむを剥ぎとり
病んだ血をむすびあうなら
空の裂け目から
あなたのうぶごえがきこえる
くちびるを開いた空に
あかい舌はもえ
青空にあなたは
白い乳をそそぎはじめる



「 こんどおむの空 」( 了 )

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