高畑耕治の詩


アルパカ流星群



 その国


その国ではいつのまにか
「 政治家 」は
あらゆる分野の専門家の提言を
アルパカのたわごとだと見くだす
全知全能の
ロバの耳をもたれたそうです

あらゆる判断をでたらめに
命じることだけがお好きなお方々
「 良心 」という単語は
読めなくなったそうです
「 責任 」ってなんだったっけ?
知らないそうです
「 未来 」なんて
見ないそうです



 ロボの国


ここは放置国家
やりたい放題無法空域
軍用ヘリ朝からバリバリ騒音積乱雲
選挙の日の日本国憲法の空にも
破壊の不安のあしたを撒き散らす
戦闘機

格闘威嚇ノススメ
教育勅語とし
煽動集団使命感カンカンに
罵り非難し潰しあい
理想国家に役だたない者
国家宗教狂信教育に従わない者
抹殺せん滅したら
誰もいなくなりました

ただしいものがひとつであるほど
アルパカは
賢くも貧しくもありませんのに

生まれ育つおさなくとうとい
いのち守るおもいなんてもう
いらないそうです

外来宗教
外来神話
外来思想
外来文化
外来芸術
外来教育
外来言語
外来文字
外来人種
外来植物
外来動物

混血憎悪し
異文化異教異人
排斥追放粛清し
役たたず間引き
根絶やしにして

より良い社会
優生純血万世一系神国
奴隷軍隊階級峻別
無敵国家
現出するそうです

建国戦勝記念日には
アルパカも馬も鹿も
ロバさえ
残されませんでした
ロボばかり
整理整頓されています



 ねがいの流星群


ゆううつなゆううつなおもくてからっぽのこころに
おもりがほしい
どこまでもしずみながらうかんでゆくこころに
のばしたてのひらのさきゆびさきかすめる
ことばがほしい
つぐみうすくひらいたくちびるふさぎよびつづけられる
なまえがほしい

ぱくぱく ぱくぱく

クニヲアイスルシュショウサマ
ツウヤクナンテイラヌヒト
ドクリツフソンノオベンチャラ
へいへい HEYHEY

あるようでないようで
とどきもしないあきらめのはてのあなたへ
おもりのことばのなまえを

もぐもぐ もぐもぐ

となえずにいられないかもくなしゅんかんの
いのりだけはせめて
すくいであってくれますように

かなうはずもないとなげすて
られもしないとたちくらみ
ゆうじゅうふにゃにゃ

まんじょういっちばんざいさんしょうの
こっかいよとうのせんせいがたのように
けんぜんでけんこうであいこくぶんかてきな
だれもかれもにただしい
おおしえのもじれつ
ふくしょうしまきちらす
きょこくいっちの
あらねばならないことばだけにはけっして
にどとよえない

しらふのまま
ろれつのまわらないよっぱらいのように

せんそうはいやだころすのはいやだいやなものはいやだと

こじんてきなこじんてきな
いきもののにんげんの
じゅもんしんごんなきごといかりの
いのりのことばだけ
となえつづけるんだ

べいこくもちゅうごくもろこくも
どうめいこくもれんごうこくもてきこくもしょこくも
にほんこくもあいこくもきらいだ
こっきょうたいせつになんておもえない

たいりくはんとうしまれっとうはすき
この星がすき
まるいめの
こどもがすき

こどもをころすひとはきらい
こどもをころすいきものはきらい
こどもをすきないきものがすき
こどもをすきなひとがすき

うちゅうのくうかんとじかんのあわのような星の
ちへいせんのすいへいせんの
まるみにぶらさがり
浮き浮きなんてもうできなくても
憂き憂き憂きとうきしずみ

すき きらい すき きらい
すき すき すき

あこがれとときめきとはじらいとかなしみの
花うらないはらはら
ねがいの流星群にちってゆくんだ



 アルパカ反歌


たちどまっていると望まないほうへ流されるばかり
えらんだら数歩だけよりましなほうへゆけるかも
ただしい方角なんてわからなくても

朝陽を夕陽を星たちをしるべに
謙虚をめざすアルパカであるまま
一歩ずつ
あるいてゆこうよ





「 アルパカ流星群 」( 了 )

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