高畑耕治の詩


静楽器



疲労のまま横たわる土管
重くだらけた空っぽの棺

耳たぶのおくf字孔へ
しらべふりそそぎ
うすっぺらな膜の鼓そっと
こすりくすぐれば

のうみそは
銀河
くびれたネック
くぐりぬけたむこう
なんにもない虚しさの
暗がり空洞の筐体すら
愛しい楽器

夢幻の

宇宙音楽の


かってに奏ではじめ
響きやまない



   こだま


しらべ流れ星
むやみにふりしきり
ひっそり
ひとり音楽祭

きしんでもいたんでもこわれてもまだ
こころ楽器なることにだけ

救われる夜もありました

なんにもなくても
なんにもみえない
あさもひるもよるも

音楽ばかりは流れ星でした




*ふりがな 棺: ひつぎ。鼓: こ。筐体: きょうたい。愛しい: かなしい。夢幻: むげん。



「 静楽器 」( 了 )

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