高畑耕治詩集『愛(かな)


ゆきだるま

いちめんまっしろ雪景色
夢はもうみたくないとうちふるえる
夜と昼
なにもみえないままこわばってゆく
夢をくだこう
( いいこともきっとあるわよ )

とおい空からゆっくりおりてくる
さふさふした雪が好きだから
ふりつもるさむい夢をほおばり
ふきだまりに足をふみはずせば
くちびるにしめり
ほおにほてりが
( うまれるでしょうか )
あわ雪のむねの
ふくらみをてのひらにそっとつつもうとして
ついついつよくにぎりしめ
がちがちのたましいにしてしまったら
みえなかった夕焼けにほおりなげ
月も星も夢もなんにもない
くらい空をみあげていよう
( いつまでたってもおちてこないよ )

はげしくふる雪にしずけさは深まってゆくから
冬の蚊のかぼそいはばたき
冬眠しているかえるのねいき
こぎつねたちの短い足と雪がうむ さくさくしたひびきに
みみをすまそう
つかれたらひとり雪をあび
みえない空のむこうからおりてくるぱいぷおるがん
おりおん座の
おんぷを しんしん
しびれるあたま
ちぎれそうなみみたぶに
( できればあなたとふたり )
あびていたい

あちらこちらの夢をかためたかまくらから
もれでていたまるいほのおも
はしゃぎごえもいまはしずまり
こどもたちのほおのほてりにねがいを
やすらかなねがおに夢をみつけたら
夜明けをまとう
煙草とアルコールでこおるからだをあたためても
こころはこごえるだけだから
最後の一本のマッチのともしびに
すがりつきすすり泣いたかなしい女の子の
ふくらむ夢をふきけすおぞましい現実が
わたくしとともにわたのようなゆきだるまになり
夢にうもれてゆき
やがておとずれるひかりにとかしだされるときまで
夢はもうみないとやわらかな雪に決意し
雪明りにそまり
( できればしらふで )
目を醒ましていよう



「 ゆきだるま 」( 了 )

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