高畑耕治詩集『海にゆれる』

あとがき

 ひとごみからやっとの思いでぬけだした旅の車窓から、木と草とたんぼのみどりをからだに流しこむとき、わけもなく海辺を歩いて磯のかおりと海のあおをすいこんでいたいとき、風景のなかにぽつりと浮かぶひとがいると、言葉をかわすことがなくても、その姿がこころにやきついてしまいます。
 楽しくても悲しくても、快いものでも痛いものでも、美しくあろうと醜くあろうと、ほとんどすれちがいのような出会いと別れを、いといながらももとめているわたしがいます。
 波と波がぶつかりあうのか、交わりあうのか、やがてとけあうのかわからなくても、多くの見知らぬひととすれちがうばかりでも、一瞬のすれちがいだけを憎みながら愛しながら、大切にしたいと思います。
 この詩集がまとまるまでに出会うことができたひとりひとりのひとが、行くあてもしらぬのっぺらぼうのようなわたしを波だたせてくださいました。
 詩人の中村不二夫さんには詩集を生みおえるまでの時間、あらゆる面での励ましと助言をいただきました。ありがとうございました。詩人の小川英晴さん、土曜美術社の加藤幾惠さん、定有堂の奈良敏行さん、濱邉真砂代さん、この小さな詩集に潮風を吹きこんでくださったお名前も知らないひとりひとりの方に、心から感謝いたします。

 一九九一年  高畑耕治


「 あとがき 」( 了 )

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