高畑耕治の詩


キャンドルお月さま



夜空にキャンドル
灯り
消えて
また揺らめいて
おぼろ月夜のクリスマス・イヴ

お月さま
笑っているの?
泣いてるの?
笑いながら泣き
泣きながら笑い
とてもあなたはきれいです

お月さま
あなたのあかり灯すのは
みあげるおんなのこでしょうか
絵本のページからこの島に
こぼれ落ちてしまった
マッチ売りの
こころかじかむ
悲しいおんなのこでしょうか

帰る家をうしない
やすらげる部屋を奪われ
夜明けまで街をさまよう
行き場のないおんなのこ
襲い覆う重たい雲

( オツキサマワタシヲダイテヨ )

ツリーもみえない凍える闇にこそあなただけは
キャンドルでありつづけてくださいますように

( 聖なる夜この世に
 なにもかもこえることのできるもののために
 あたえられ
 名づけられ
 呼びかけられ
 灯された言葉は
 愛

 信仰が壁なら
 宗教が差別する牢獄なら
 くり返される
 戦争殺戮
 十字軍の
 大義にされてしまえるものなら
 愛しい
 キャンドル
 かき消されます )

今夜お月さまあなたはああ
あのマッチのあかりに照らしだされた
おんなのこの
ほおと瞳そのまま
こんなに
まあるい
あかるい
満月

( ふかくひかりたたえ澄みきり )

ああああと
泣いている雲間のこころに
みあげるだれもに
やわらかな
手のひら
あたりまえに
あたえてくださる
あかりあたたかな
キャンドル

贈りもの
ひかりの絵本に
ときめきみひらかれる
おんなのこの

みまもり

やさしいきみはとてもきれいだと
こころの痛みに
そっと
伝えてくださいますように




* ルビ 灯り: ともり。夜: よる。愛しい: かなしい。



「 キャンドルお月さま 」( 了 )

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