高畑耕治の詩


考えるカエル
  ― 死生音楽、オタマジャクシの



三.転生


想い起こそうにも
永劫にも思える
深い眠りの季節から
目覚めるとわたしは
土色に濡れた肌
ふたたび
一匹のカエルでした

ひとでなくてほんとうによかった
このことばかりは
あれほどにまで不条理好きで残虐な
かみさま仏さまエンマさまの気まぐれな
御慈悲とばかり
思えてなりません

わたしはたしかにカエルでした

雨に濡れた土ひんやり
なつかしくかおる
なぜか涙ぐましい
夜です

想い起こせば
わたしがまだ幼く
跳ねる足もないカエルの子どもであった日
あおあお揺れる稲のかげから見あげた
波紋のずっと向こうの
はえたばかりの手も届かない高みの
あお空には
白いおおきなクジラ雲
憧れるわたしは
夢みるオタマジャクシでした

やがて足もはえ
跳ねることを学び
なんどもなんども
挑みましたが
どんなにあがいても
届かない
遥かなあお空の海の
クジラ雲にはなれない
田んぼのカエルの
定めをしりました

お月さまに跳ねたけれど
うさぎさんにはさわれなかった
あの哀しい日
夕陽に跳ねたけれど
一番星に跳びついたけれど
弧を描き土に舞い落ちた
虚しさの日

すねていた投げやりガエルのわたしに
語りかけ
救ってくださったのは
あの日の優しい
あなたでした





「 考えるカエル 三.転生 」( 了 )

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