高畑耕治の詩


考えるカエル
  ― 死生音楽、オタマジャクシの



一.どこへ


雨に濡れたアスファルトの帰り道
ぬめる石ころふいに動きだして驚けば
ヒキガエル
出会えたことが今日のしあわせ

気づけばもうすぐ冬眠の季節
自転車にひき殺されることなくどうか
土にまでたどり着けますように
深くふかく眠れますように
暖かだという春までもう
目覚めませんように

カエルのまなざし
まぶたのおく憂いおびる
仏像のように穏やかな目をみつめ考える
かえるかえるといっていったいどこへ
かえる?

土にかえる
雨にかえる
川にかえる
海にかえる
星くずにかえる
宇宙空間にかえる
時空のひずみにかえる

この穢土からなだらかにくだってゆけば
親しいあの景色
天界の清らかな蓮の花も根を浸し
純白無垢な血を吸いあげているという
漆黒の闇こそかえる地
犯しつづけた罪をあがなう
永遠の
冬にふさわしい

やすらかに眠れますように
うららかな春にも二度と
目覚めませんように

カエルに出会えた今日はしあわせ
あの迷いのないまなざしを思い浮かべ
いのり考える

カエルかえるどこにかえる

わたしも冬眠を
くりかえしてきた
カエルであった気がして
なりません





「 考えるカエル 一.どこへ 」( 了 )

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