高畑耕治の詩


うた。満ちゆく月の、潮騒の。反戦の。


(5) レモン返歌。潮騒の

     - 「おもちつきこもりうた」



美しいレモンのかたちの
お月さま
滴の言の葉
きらめきながら
さらさらと

「 悲しみのふかさは
 喜びのきよらかさの
 泉です

 みどりの谷間にわきあがり
 結びあえる方角へ流れゆく
 しずかなせせらぎ
 穏やかな水だけが
 炎の狂気を鎮めます

 みどりを空を
 水面に映して
 美しい未来
 遥かに波うつゆたかな
 海
 ひろがる彼方を
 教えてくれます 」

レモンお月さま
ゆりやまない
ゆたかなせせらぎの
水のひかりの
ひと滴であるまま
火種をのみこみ
戦争の
原発の
狂気にあおられた炎を
消しさることができるでしょうか?

「 澄みわたる水の
 流れでありたいと
 素直に
 願ってごらん
 透明な長い髪
 なびかせ流れゆく
 水の少女のささやき
 せつなく
 恋するままに 」

戦争をしない
原発いらない
暴力を強制しない
共生力はぐくまれる
水のこころ
伝えあうことはできるでしょうか?

「 生まれでたこの星の
 海を
 永遠の女を
 想ってごらん
 母を
 羊水を
 なつかしく
 愛するままに 」

人殺しの道具さえ
ビジネスチャンスと群がり巣くう
獣性下劣さむきだしの
財界非道者も
放射性物質
まき散らし垂れ流しつづける
利権ムラ確信犯も
暗黒汚点とだけ記録して
過去に葬りさることはできるでしょうか?

「 未来は
 みつめれば
 いつだって
 未知の
 可能性の
 ゆたかな
 波立ち

 愛する気持ちに
 素直になれば
 こころときめく
 愛しい
 泡立ち

 素足で
 一歩
 ふみだし
 潮騒へ

 まぶしい
 あの
 海へ

 あなたの愛する
 あなたを愛する
 海へ
 ゆきなさい

 生きなさい 」

レモンお月さまのふりしきる言葉は
潮風のきらめきでした
潮騒に
波のひかり
磯のかおりに
あたりいちめん
つつまれわたし
大好きな
大切な
海に
ゆれていました
波間でいつしか
こもりうた
くちずさんでいました



 『  おもちつきこもりうた


  みちふくらみますお月さま
  もうすぐ十五夜おもちつき

  子どものきもち
  ねがいのおもち

  まんぷくおなか
  ぽっこりまんげつ
  ねがおほっぺ
  ふっくらおもち

  ゆめのきもち
  ゆめのおもち
  ふるふるるるる

  まんまんまんげつ
  うさぎさんのおもちつき 』



レモンお月さまも
にっこり
うとうと
あれ?
もうぐっすり

ほっぺも
ちょっぴり
ふくらんだよう
まあるくなあれ

おやすみなさい




* ルビ 永遠の女: えいえんのひと。愛しい: かなしい。



「 うた。満ちゆく月の、潮騒の。反戦の。(5)レモン返歌。潮騒の 」( 了 )

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