高畑耕治詩集『海にゆれる』


あざらし

月のひかりのない夜は
磯のかおり
草木のささめき 潮騒も
みんなくろくこんがらがって
こわれた木切れをひろいあつめ
沖にむかってたき火する

きっとみえる

ちかいむかし あざらしが
陽をあびねそべりこどもをそだて
絶滅したと
風がつたえる岩のあいだで
あざらしにかえりたいとつよくねがい
星にとどかない貝殻草
精子を せめて波にかえそう

空の瞳をまぢかにみつめ
あたたかいはだのひかりをあび
星と精子は交わりながら
波にちらばり
のみこまれてゆくかなしみの
つめたい波にだかれるむだなくるしみにもいみは

きっとある



「 あざらし 」( 了 )

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