高畑耕治の詩


セミ、鳴きつくし



白砂のうえ仰向け
セミがいたよ

降りしきるせみしぐれ浴びまだ
羽根ふるわせていたよ

鳴いて
いようと
していたよ


響かない
夏空白い雲にまでもう
届かない

激しい夕立に打たれ

息絶え
粉ごな砂粒にやがて
混じり消えても

愛しあった輝きの
記憶
雨音に聞こえた気がしたよ
雨粒に奏でられていたよ

最期まで鳴きつくしきみ
愛しくて
セミ




* ルビ 白砂: しろすな。雨粒: あまつぶ。
     愛しくて: かなしくて。



「 セミ、鳴きつくし 」( 了 )

TOPページへ

銀河、ふりしきる
目次へ

サイトマップへ

© 2010 Kouji Takabatake All rights reserved.
inserted by FC2 system