高畑耕治の詩


果実、実りと祈りのうた




食べられて
愛する小鳥
あなたの身になれますように

土深く根差した幹の枝先で
風にゆれるばかりのわたし
歩けず飛べないけれど
あなたが食べてくれますように

わたしに宿された種子を
遠くへ
あの空のあおはるか
遠くへ
運んでくれますように

新しい地の
土にまどろみ
目を覚ましふくらみ
芽吹き
花咲き
やがて
果実と結ばれ
未来へ種子宿す
美しい実りの日

夢想しながらわたし
たわわに
実っています
愛おしい小鳥あなたにこのまま
ぷるんと
食べられたい

さえずるあなたの喉笛になりたいのです



  小鳥の反歌


果実あなたは前世で
殺し食べずには生き延びられない
獣であること
悲しんでいましたね
だから果実
結ばれたのですね
祈りの
美しい実りに

わたしあなたを食べ
運びますね

果実どうかわたしの喉笛となり
このうたを
きよめてくださいますように




* ルビ 前世: ぜんせ



「 果実、実りと祈りのうた 」( 了 )

TOPページへ

銀河、ふりしきる
目次へ

サイトマップへ

© 2010 Kouji Takabatake All rights reserved.
inserted by FC2 system