高畑耕治『死と生の交わり』

あとがき

一冊の本のかたちにまとめることのできた、これらの言葉が生まれでたとき、私の思いを励ましてくれたのは、私が出会うことのできたひとりひとりのひとでした。ひとりひとりのひとの表情や言葉が私を揺り動かし、言葉にせずにはいられない思いが生まれました。
 ひとりでありたいと希(ねが)い、ひとを拒んでいたときも、絶えずひとを求めていたのだと今は思います。
 これまであまりにひとを傷つけてきたけれど、それでも生きつづけてきた時間、私を見捨てず、励まして下さったひとりひとりのひとに感謝します。
 何かを信じることのできたひとにとって、この本の言葉は「病んでいる」のかもしれません。けれど、混沌とした矛盾を生きたいと希(ねが)う私は、「病む」ことをくぐりぬけたひとにしか感じえない優しさがあるのだ、それは人間の深さなのだと思います。
 ひとを傷つけ傷つけられる痛みだけが、それを感じとろうとする感受性だけが、私をこれからも変えてくれると思っています。
 ひとを拒みながらひとを求めているひとりのひとが、どこかで道ばたのこの本に気づき、みつめてくれること、そのひとだけの思いと響きあうことを、希(ねが)っています。
 小さな雑草のような思いにも心をとめ、出版を引き受けて下さった批評社の佐藤英之さん、内容をくみとり装幀して下さったデザイナーの吉村貞廣さん、製作・流通の現場の方々、ありがとうございました。

 一九八八年十一月  高畑耕治


「 あとがき 」( 了 )

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