高畑耕治『死と生の交わり』



わたしがあまりにたどたどしく
死んでしまったひと
生きているひとにささえられ
浮き沈みをくりかえし
傷つけ傷つけられながら
感じとれるようになった思い
見失いそうな思いをきざみつけようとし
そのために 生きつづけようとしている いま

あなたと ひとりのひとと むきあい

あなたの瞳から
ひとしずく
涙がながれた

 こわれそうな目 ゆがむ頬
 ふるえるくちびるによせた指さき

くちびるが
思いを言葉にこめつたえることを
ためらい しくじり あきらめかけていた くちびるが
ひとしずくの光にたたえられた 沈黙に くちづけられる
かなしみいっぱいのよろこびが
かたくななわたしを
しずかにあらいながす



「 涙 」( 了 )

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